復刻寄稿集・佐渡の釣り                       


●著者は沢根、山田屋釣具店店主氏。オールラウンドな釣りに精通し、
関連雑誌、新聞記事等の執筆、TV、ビデオ参加も多種。
世紀に伝えたいクロダイ釣り場 *佐渡島・米郷周辺
佐渡島は日本海に浮かぶ大きな島である。
クロダイ釣り場の形態として様々な条件が混合し、季節や釣り方により狙う場所が選べる実に魅力的な釣り場である。特に、佐渡最大の国府川が注ぎ込む真野湾の出口にあたる七浦海岸は、水深、塩分濃度、起伏に富む地形等、クロダイの生息に適した条件が揃っている。また、釣りができる沖磯が多いのも特徴で、渡船もほぼ充実している。この七浦海岸一帯は佐渡の中でも最大級の沖磯点在地区であり、約一ヶ月続く佐渡のクロダイ乗っ込みの中でも早い地区。その中で米郷地区は一番真野湾(南)側に位置している。クロダイ稚魚の育成にかかすことの出来ない汽水域や、穏やかな湾。その湾と外海との境にあたる米郷地区は、未来につながる佐渡島クロダイ釣り場のバロメーター的存在なのである。七浦海岸の沖磯の数はざっと50以上あり、その中で米郷地区の沖磯は12程。また、船頭が無理に釣り客を磯一杯に詰め込まず、人を乗せない磯を作るようにしているのも磯替りができて嬉しい。
佐渡のクロダイは一年中釣れるが、沖磯に乗って狙うのは春の居着きから乗っ込み後一ヶ月ほど。それ以外の季節は地磯周りが主で沖磯に乗って釣りをしているのを見るのは稀である。釣果の方も居着きの大型狙いから、数、型共に狙える乗っ込みと毎年安定している。佐渡では大型に入る50オーバーも、居着き、乗っ込み期共に毎年釣れている。特に乗っ込み初期は深場が狙い目。中盤〜終盤は日々釣れ方が変わり、どこで大型が食ってくるか解らず、チャンスはどの磯にでもある。数はやはり乗っ込み時期が良く釣れ、米郷全体で60枚を超える日は毎年何日かある。一つの磯で20枚なんて事もあるのだ。その他の時期もクロダイはいるのだが餌取りが多くコマセ、付け餌を考えないと苦労する。夏から秋にかけてのスイカ釣りや、カニ餌での釣り、ダンゴ釣りなどで狙えば釣れるのは間違いない。

*米郷・次郎島
この磯は米郷を代表する横一列に並ぶ島(太郎、次郎、三郎、四郎、ヨリ島)の北から二番目に位置し、水深もあり、四島のうち一番大きな島である。平成11年も5月の初め、居着きの50センチ超えが上がっている。釣座としては、4、5人の磯であろう。基本的に潮下側に釣座をとるが、足元から深く周りにこれといった根が無いため、際で食うことが多い。特にシーズン初期は、際と竿2本以上の底近くでのアタリが多い。二枚潮になることもしばしばで、やはりコマセを追いかけて釣る事ができる人に軍配が上がる。南側の端はちょっと渡りづらいのでここで竿を出したい人は最初から船を着けてもらうといいが、速い当て潮の時はコマセが左右へと流れて溜まる場所が無いため、釣りにならないので注意。沖向きと北向きも実績の釣り座。手前の際から順に探っていくといい。乗っ込み中盤ともなれば潮筋の中層で数が出る。条件の違った釣座が選べるので、3人位で上がれば一日退屈しないで攻められる魅力的な磯である。

*米郷・四郎島
周りに根が多く、移動するクロダイが足を止める。潮も、速さ、方向で複雑に変わるので釣っていても楽しい釣り場。どちらかというと、乗っ込みが始まってからが面白い釣り場だ。夏以降、スイカ釣りをするのにもいい磯である。南側のヨリ島の周りは浅く根だらけで、四郎との水道はちょうどクロダイを釣り易い水深の4ヒロ前後。三郎向きは結構深いが、沖側と陸向きに沈み根があり、これにクロダイが付く。真野湾からの潮がヨリ島と双股岩で分かれ、四郎で緩み、合わさる。潮の強さにより流れが変わる原因がこの地形にあり、またこの方向の流れが多いのである。この四郎島、実績も安定している。平成10年6月に、かの鵜澤政則名手が午後から渡礁し、52、5センチを頭に4匹のクロダイを仕留めたのだった(ちなみに次の日は次郎で47、5センチ)。
エサ・情報・山田屋釣具店(0259−52−6513)渡船・民宿・民宿つかさ(0259−76−2926)
なお、佐渡島で釣りをするのには、車でないと移動が不便である。出来れば、釣友を誘って3,4人で一台の車に乗り合わせて来るのが経済的。釣宿、佐渡汽船への予約はシーズンになると混むので、早めにしておいたほうがいいだろう。佐渡汽船・新潟(025−245−1234)直江津(0255−44−1234)
米郷地区への所要時間は新潟〜両津、直江津〜小木のどちらの航路からでもそんなに違いはない(約40分〜1時間)ので、アクセスし易い航路を選べばいいだろう。



クロダイ乗っ込みへのアプローチ 佐渡島
佐渡島のクロダイ乗っ込みはゴールデンウィークが終わる頃から始まる。特に相川の沖磯群は磯の数、渡船業者の多さで佐渡の中で群を抜いていて、佐渡を訪れるクロダイ師の中でも人気は高い。5月中旬、水温14度以上が安定する頃にはクロダイの群れが接岸し、高確率で銀鱗に出会えるようになる。

高瀬沖の中ノ島
相川町、七浦海岸の高瀬、大浦地区は三十以上の沖磯群があり波にも強い磯が多数ある。大きくシンボル的な白島の並びに中ノ島、イジマがあり、この三島で20人は釣座が(実際はそんなに乗せない)取れる。その真ん中に位置するのが中ノ島で、沖側と陸側の釣り場条件が違い、南北両側の島に挟まれ、その水道もポイントになるので様々な釣り場が選べる。特に乗っ込みに入ってからの信頼度は高く、他の島で釣果がなくともこの島だけ竿が曲がる事が幾度とあった。

波の高さと風向きで釣座を選定するが、潮は沖側の方が良く動くので気持ちのいい釣りが出来る。水深はあるが立ち上がった根が沖に点在していて魚が付き易い。水道は荒れ気味の時が狙い目。潮の動きが複雑になり易いのでコマセが何処に流れて溜まるのかを常に考えて攻めていく。サラシを攻めても釣れない時、メジナ釣りと違いタナが深い事が多いのでサラシに惑わされず底潮に仕掛けを合わせていく事。時には水中ウキを付け、吸い込まれる潮に任せて仕掛けを十数メートルも送り込んで釣る事もある。とんでもない場所にコマセとクロダイが溜まっている事がよくあるのだ。

内側の船着けは左側が浅め。しかし乗っ込み中盤からのポイント選びに欠かせないのが藻場であり、緩い潮流れの砂地に藻場が広がるこのポイントは最高の釣座になる。沖側に立てない時、ウネリがサラシを作りコマセを運んでくれる。さらに濁りがあれば完璧なポイントとなる。釣り易い場所なのでエサ先行できっちりと流そう。タナは2ヒロ半から4ヒロ位。また、近くでは釣れない時は大遠投してみる。緩い横流れを釣る事が多く、遠矢ウキ等の立ちウキが有利だが円錐ウキの場合、水中ウキを併用するといい。この場合のコマセは粘りの強い配合えさを混ぜ途中でバラケ無いようにしたい。このポイント周辺は渡船の上からクロダイの姿がよく見える場所である。この磯のベスト人員は3〜4人で釣座を選びながら一日中釣りを楽しむ事が出来る。多くて7人程。また、すぐ横の白島、イジマも同様に乗っ込み期、魅力的な磯である。



春告魚、メバル(眼張) 桜前線が日本列島を北上し、軒下からツバメが舞い始めているのに気付く。凪の日も多くなり、湾に注ぐ川の河口にはシロウオやイトヨ等が姿を見せる。やっと海にも春がやってきた。
メバルのことを佐渡ではハチメと呼ぶ。ソイの仲間や沖メバルなども含めてそう呼んでいるが、地域によって呼び名に違いがある。メバルの体色は浅場ほど黒く、深場ほど赤が強い。白色の強い魚体もいるが、全て同一種とされている。
つつじの花が咲く時期に釣れるメバルをツツジバチメと呼び、冬の間寒くて釣りに出なかった太公望たちも、やおら竿を持って磯や堤防へと繰り出し始める。
岸からのメバルの釣り方は現在おおよそ3種類。フカセ(みゃく)釣り、ウキ釣り、そして近年流行っているルアー釣りである。どの釣りも、餌を動かして誘ったほうが食いがいい。魚の活性が高いと、水面付近まで浮いて餌を追い、そうなると数釣れる。餌はイソメやシロウオを使うが、ルアーはワームをつけて釣る。

メバル釣りは誰でも簡単にできるのが嬉しい。海はできるだけ静かなほうがいいし、堤防でも釣れ、釣り方もそう難しくない。しかし日中より夜のほうが良く釣れるので、夕方から出かけることになる。
小気味よい引き味もさる事ながら、食味も良いのが魅力だ。締まった身には、なんとも言えない上品な脂があり、25p位の型なら、充分刺し身もとれる。また、焼き魚、煮付けも美味しいし、小型のから揚げも旨い。
凪の日に近場で釣れて、食べても美味しい。昔から庶民に親しまれてきた魚であるこのメバル。しごく平和的な印象を受けるのは私だけだろうか。



メジナ 梅雨に入り、雲も気分も低く垂れこめる日が多くなった。そろそろあじさいが開花する頃だ。蚊が多くなり、風の無い日の釣り場ではブヨが手足や首筋に群がり釣りの邪魔をする。雨の日の釣りはうっとうしいが、釣りに魅せられたケダモノヘン(狂)にとっては、家に閉じこもりきりなのも辛いのでレインウェアーを着て釣りに行くこととなる。

私の好きな釣り魚の一つにメジナがいる。市場に出ることが少ないので一般に 馴染みは薄いが、全国の磯釣り人気の一、二を争うメジャーな魚種である。佐渡で人気の高いクロダイのウキフカセ釣り、実はメジナ釣りが基になっているのである。このメジナ、関西ではグレと呼び、体型はタイに似て体高があり、身も厚い。体色は黒っぽく、時には緑がかった青。引き味の強さと大型をそろえる難しさが釣りを面白くさせている。佐渡のメジナの平均は20センチ前後(最大51、2)とあまり大きくはないが、ほぼ全ての堤防、磯に生息し、アジ釣りやクロダイ釣りの外道としてよく釣れてくる。内湾より外海に面した水深のある釣り場に多い。撒き餌、付け餌共にオキアミを用い、日中から夕方にウキ釣り仕掛けで釣る。25センチ以上のメジナは引き味もよく、大型ほど食べても旨い。意外に美味しい事は知られてなく、刺身、洗い、タタキにフライ、ホイル焼き、煮付けや味噌汁にする人もいる。
釣った魚を持ち帰るなら美味しく食べてやるのが礼儀。これからの季節、クーラーに氷は必需品で、特にメジナやクロダイは磯臭さを消すため血抜きをすればさらに良い。

釣りたてのイカと同様釣り人だけが味わえる新鮮な釣魚料理。クーラーの効いた部屋で今日も雨だとグレてないでメジナ釣りにでも出かけませんか。アメニモマケズ・・


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